反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)とは、交感神経の異常な反射亢進を基盤とする疼痛、腫脹、関節拘縮などを主訴とする病態です。
その疼痛は、原因となる外傷に不釣り合いに強烈であるという特徴を有します。
近時は、CRPS(複合性局所性疼痛症候群)とも呼ばれています。
なお、カウザルギーという病名もありますが、カウザルギーとRSDを合わせたものが、一般に、CRPSと呼ばれる病態です。
RSDの症状は?
RSDの症状は、4主徴として、疼痛、腫脹、関節拘縮、皮膚変化があり、その他、骨萎縮、筋萎縮、抹消循環不全などが生じることがあります。
疼痛は、原因となる外傷に不釣り合いに強烈です。
皮膚の色は、初めは赤色になり、その後、赤黒から蒼白へと変わることが多いと言われています。
ただし、個人差があり、これ以外の特徴を示す症状もあるようです。
RSDの診断基準について
RSD(CRPS)の診断基準(臨床的な)としては、伝統的には、Gibbonsのスコア、Kozinの診断基準などが存在します。
しかし、これらの診断基準は、感度が高いが特異度が低いため、早期診断早期治療に対応するための診断基準としては適しているものの、確定診断には適していないとの意見もあります。
ほかに最近のものとして、国際疼痛学会の診断基準2005年版があります。
しかし、この基準も未だ十分なものではなかったという認識のもと、厚生労働省科研費で日本の研究班が2008年に新たな判定指標を作成しました。
したがって、日本においては、現時点では、この判定指標が最新のものとして有用であるといわれています。
ただし、この判定指標は、臨床や研究の現場でRSDかどうかを判定して治療方針の決定や予後予測などをするための指標にとどまり、訴訟などにおける認定では直接用いるべきではないとの但し書きが記されています。
したがって、この判定指標は、RSDかどうかを訴訟や補償の場で認定するための基準そのものではありません。
以上のとおり、いくつかの診断基準が存在しますが、いずれも臨床や研究の現場でRSDかどうかを判定するための指標であり、訴訟や補償の場でRSDを確定的に診断するための基準はいまだ確立されていないといってよいでしょう。
RSDの後遺障害認定基準について
自賠責保険法におけるRSDの後遺障害認定基準は、症状固定時において、疼痛(原因となる外傷に不釣り合いに強烈である疼痛)のほかに、①関節拘縮、②骨の萎縮、③皮膚の変化(皮膚温度の変化、皮膚の萎縮)という慢性期の主要な3要件が健側と比較して明らかに認められることが必要とされています。
ここでのポイントは、「明らかに」認められなければならないということです。
例えば、画像診断や検査によって客観的に認められなければならないという意味であり、非常に厳しい要件となっています。
自賠責保険における後遺障害認定基準は、保険請求という特別な場面において作成された認定基準ですので、厳格かつ画一的に設定されているのです。
そして、等級については、カウザルギーと同様の基準により、第7級、第9級、第12級のいずれかに認定されることになっています。
RSDの自賠責保険法上の後遺障害認定基準の特徴
世界疼痛学会の診断基準2005年版や厚生労働省CRPS研究班による判断指標などと比較してみると、これらの基準ではいずれも必要条件とされていない①関節拘縮、②骨の萎縮及び③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)という3要件が、自賠責保険の後遺障害認定基準では必要条件とされています。
自賠責保険法における障害認定の実務は、RSDと診断するに足る客観的な所見を必要とするという見解を前提としているのです。
そのため、医師の診断ではRSDと診断された場合でも、自賠責保険法上の後遺障害等級認定においては、後遺障害非該当と判定されてしまうという事態が起こるのです。
RSDと弁護士の役割
RSDについて、医師が用いる診断基準と、自賠責保険法上の後遺障害認定基準には、差異があります。
しかし、多くの医師は、自賠責保険法上の後遺障害認定基準を熟知していません。
治療自体のためには必要のない基準だからです。
その結果、医師の診断ではRSDと診断された場合でも、自賠責保険法上の後遺障害等級認定においては、後遺障害非該当と判定されてしまうという事態が起こるのです。
そのような場合でも、自賠責保険法上の等級認定実務に精通した弁護士の支援を受けることで、適切な後遺障害認定を受けることができるのです。