外傷性頚部症候群の神経症状について

 本稿では、むち打ち、診断名としての「外傷性頚部症候群」の主な症状である「神経症状」について検討します。

  • むち打ちは「首の捻挫」と言える。
  • 首を痛めると、腕等に痺れを感じることがある。
  • 原因を特定するためには、MRIが有用であろう。

頚椎の基礎知識

頚椎の構造
 ほ乳類は、わずかな例外を除き、くびの長さに関係なく、キリンからカバに至るまで、7個の椎骨からなる頚椎を有しています(もちろん人間もです)。
 但し、7個の椎骨を特定する時は「第7椎骨」とは言わず「第7頚椎」と呼ぶことが一般的です(「椎」という漢字自体に「骨」という意味があります)。極めて大まかな表現になりますが、頚椎とは「首の骨である」というのがイメージとして一番分かりやすいのではないでしょうか。

 頚椎は英訳すると「cervical spine」となります。ですので、医療実務では「C」で表示し、第一頚椎を「C1」第七頚椎を「C7」と言うように「C」をつけて呼びます。

外傷性頚部症候群の神経症状とは

 むち打ちは「外傷性頚部症候群」の他「頚椎捻挫」とも言われます。つまり、端的に言えば、むち打ちは「首の捻挫」であると言えます。
 しかし、足首をぐねって捻挫した場合、その痛みは主に足首のみに生じますが、首は多くの末梢神経が枝分かれして出て行く所になりますので、首以外にも影響が及び得ます。
 ここに、むち打ちの神経症状を検討する意義があると言えるでしょう。

 実際に多い外傷性頚部症候群の神経症状とは、左右いずれかの頚部、肩、上肢から手指にかけての痺れです。
 痺れといっても、14級9号のレベルであれば、それほど深刻なものではありません。重だるい感覚であったり、軽い痛みであったり、感じ方や表現方法は人それぞれに違いがあります。
 ですので、相談時には言葉を変えて質問を重ね、被害者様の自覚症状を見落とすことのないよう留意しています。

神経症状のポイント

 外傷性頚部症候群で注目すべきポイントは、主にC5/6、C6/7の神経根の圧迫による神経症状です。
 脊髄から枝分かれをしたC5/6、C6/7の左右2本の神経根は、左右の上肢を支配しているからです。
 C5/6右神経根が圧迫を受けると、右手の親指と人差し指に、C6/7では、薬指と小指に痺れが出現すると言われています(但し、個人差はあります)。

 X線やCT(コンピュータ断層撮影)は骨を見るためのもので、神経根が確認できるのは、MRI(磁気共鳴画像診断装置)だけです。
頚椎で神経根が圧迫されている様子を図示しています。
 受傷後に撮影したMRIで、C5/6/7の神経根の通り道が狭まっていたり、明確に圧迫を受けていることが確認できたときは、自覚症状に一致した画像所見が得られたことになります。
 他覚所見の得られにくいむち打ちでMRIと自覚症状の整合性が得られれば、後遺障害認定の際の判断材料にすることができます。
 ですので、当事務所では、できるだけ早期に、具体的には2ヶ月以内にMRIの撮影を受けて頂くようアドバイスしています。

まとめ

 むち打ちによる損傷部位はレントゲンで特定しづらいものです。足を捻挫した際に「骨に異常はないから捻挫でしょう」と言われるのと同じロジックですね。
 しかし、首は末梢神経が枝分かれしていく重要な部位ですので、捻挫によって神経根が圧迫されている可能性があります。神経根が圧迫される代表的な症状は、腕から手指にかけての痺れです。
 そのような神経症状がある場合、神経根が圧迫されているかを確認する最も効果的な方法はMRIで患部を撮影することです。
 MRIで神経根の圧迫が確認できれば、自覚症状との整合性を得ることができ、万が一後遺障害が残った時の有力な判断資料となります。

 とはいえ、交通事故は二つとして同じ事故はなく、それぞれに発生状況が異なっています。ですので、インターネットの情報を形式的に当てはめて考えるのではなく、実情に合わせて最善の方法を考えていく必要があります。
 当事務所では、交通事故被害者様のご相談については、初回無料で対応しておりますので、どうぞお気軽にご相談くださいませ。