肩関節の構造

 肩のお怪我は、交通事故で頻繁にご相談頂く部位と言えます。自動車に乗車中のお怪我で、シートベルトを締めている場合はあまり痛められることはないようですが、二輪や歩行中の事故では肩の痛み、可動域制限がしばしば問題になります。

 本稿では、肩関節の交通事故後遺障害を考える上で必要となる構造について検討します。

  • 肩関節は自由度が高いが故に不安定である。
  • 不安定であるが故に、外傷に弱い部位であるとも言える。
肩関節の解剖図1
肩関節の解剖図2

 上図のように骨だけで肩関節を見ると、丸い上腕骨頭が肩甲骨の窪みにひっついているだけで、肩甲骨は、鎖骨につり下げられるように連結し、頼りなげな構造となっています。
 このように単純な構造になっているが故に、肩関節は、上肢に自由度の高い運動範囲を与えている一方、極めて不安定であり、外傷の衝撃により、骨折や脱臼を起こしやすい部位であると言えるでしょう。

 こういった不安定性を補う必要から、肩関節は、関節唇・関節包や腱板によって補強されています。骨と骨を繋ぎとめる役割は主に靱帯が果たしますが、自由に動くようにするため、靱帯で強く結合しているという感じではありません。
 上方には、烏口肩峰靱帯があり、上方の受け皿となり、滑液包が潤滑の役割を担っています。
 関節包は余裕を持たせる一方で、局部的に肥厚し安定性を高めています。

三角筋と大胸筋

三角筋と大胸筋
 肩関節は、三角筋と大胸筋の大きな筋肉で覆われています。
 三角筋は、肩関節を屈曲・伸展、外転、水平内転・水平外転させる作用があり、大胸筋は、肩関節の水平内転、初期段階の屈曲、内転、内旋動作などに関与しています。

肩関節に関する後遺障害を検討します

 このセクションでは、ムチウチに次いで多発している鎖骨骨折について、遠位端骨折、肩鎖関節脱臼、胸鎖関節脱臼の3つの外傷と後遺症について検討します。
 さらに、肩腱板断裂、肩関節の脱臼、反復性肩関節脱臼、肩関節周囲炎、上腕骨近位端骨折、上腕骨骨幹部骨折になど、肩関節周辺で発生している全ての傷病名と後遺障害についても考えてまいります。