- 鎖骨骨折は、むち打ちに次いで多いと言える受傷態様である。
- 鎖骨の後遺障害認定は、運動痛の有無が大切になる。
鎖骨骨折は、交通事故でもご相談の多いお怪我です。
自転車、バイクといった二輪VS自動車の交通事故で、被害者が転倒、手・肘・肩などを打撲したときに、その衝撃が鎖骨に伝わり、鎖骨骨折を発症しています。
また、追突、出合い頭衝突、正面衝突では、シートベルトの圧迫で鎖骨が骨折することもあります。
鎖骨骨折の受傷部位
鎖骨の横断面は、中央部から外側に向かって三角形の骨が、薄っぺらく扁平して行きます。
三角形から扁平に骨が移行する部位が鎖骨のウィークポイントとされており、鎖骨骨折の80%が、その部位で発生していると言われています。この部位は、より肩関節に近いところから、遠位端骨折と呼ばれています。
その次の好発部位は、肩鎖関節部です。肩鎖靱帯が断裂することにより、肩鎖関節は脱臼し、鎖骨は上方に飛び上がります。
鎖骨骨折の検査と治療
鎖骨骨折のご相談では、単純X線検査によって骨折が確認できる事例がほとんどです。 治療は、ほとんどがオペによらず、固定による保存療法が選択されています。
胸を張り、肩をできる限り後上方に引くようにして、クラビクルバンドという固定具を装着し固定します。
一般的には、成人で4~6週間の固定で、骨折部の骨癒合が得られます。
鎖骨骨折の後遺障害認定
鎖骨の後遺障害認定では、変形障害が主な論点となります。
鎖骨は体幹骨であり、変形があれば、体幹骨の変形として12級5号の認定が予想されます。
症状固定時に裸体での変形が確認できれば、認定基準を満たします。
ところで、鎖骨の変形では、「骨折部に運動痛があるか、ないか」が重要なポイントになります。
体幹骨の変形による12級5号では、骨折部の疼痛も周辺症状として含まれてしまいます。つまり、疼痛の神経症状で12級13号が認定され、併合11級となることはないのです。
なんの痛みもなければ、変形で12級5号が認定されても、逸失利益のカウントはありません。しかし、運動痛が認められていれば、10年程度の逸失利益が期待できます。
変形に伴う痛みは、鎖骨骨折部のCT、3D撮影で骨癒合状況を明らかにして、立証しています。
肩関節機能障害
また、鎖骨の遠位端骨折部の変形により、肩関節の可動域に影響を与えることが予想されます。こうなると、鎖骨の変形以外に、肩関節の機能障害が後遺障害の対象となります。となれば、骨折部位の変形をCT、3Dで立証しなければなりません。
左右差で可動域が4分の3以下であれば、12級6号が認定され、先の変形による12級5号と併合となって併合11級が認定されることになります。
部位 | 主要運動 | 参考運動 | |||||
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肩関節 | 屈曲 | 外転 | 内転 | 合計 | 伸展 | 外旋 | 内旋 |
正常値 | 180 ° | 180 ° | 0 ° | 360 ° | 50 ° | 60 ° | 80 ° |
8 級 6 号 | 20 ° | 20 ° | 0 ° | 40 ° | |||
10 級 10 号 | 90 ° | 90 ° | 0 ° | 180 ° | 25 ° | 30 ° | 40 ° |
12 級 6 号 | 135 ° | 135 ° | 0 ° | 270 ° | 40 ° | 45 ° | 60 ° |
主要運動が複数ある肩関節の機能障害については、屈曲と、外転+内転のいずれか一方の主要運動の可動域が、健側の2分の1以下に制限されているときは、肩関節の機能に著しい障害を残すものとして10級10号、同じく、4分の3以下に制限されているときは、肩関節の機能に障害を残すものとして12級6号が認定されています。
屈曲と、外転+内転が、切り離して認定されていることに注目してください。