- 交通事故のお怪我としては事例は多くない。
- 後遺障害は、変形障害が中心的な論点となる。
胸鎖関節脱臼というのは、ご相談としては稀な事案であると言えます。
胸鎖関節は、鎖骨近位端が胸骨と接する部分で、肩鎖関節の反対に位置しています。
胸鎖関節は、衝突などで、肩や腕が後ろ方向に引っ張られた際に、鎖骨近位端が、第1肋骨を支点として前方に脱臼すると言われています。これは、いわば肩からの介達外力によって脱臼するケースですが、前方から直接的な外力を受けた場合も当然脱臼することが考えられます。
胸鎖関節脱臼の検査
検査は単純X線検査によって行われるのが一般的のようです。
胸鎖関節脱臼による後遺障害
鎖骨近位端の変形
まず、鎖骨の変形が立証できれば、12級5号が認定され得ます。胸鎖関節脱臼で鎖骨が突出するのは、○印の部分です。
次に問題となるのが肩関節の運動制限です。
1)肩関節の可動域
肩関節の外転運動における正常値は180°です。ですので、患側の可動域が135°以下であれば、12級6号が認定される可能性があります。
しかし、胸に近い側で脱臼しているのに肩関節に運動制限を残すというのは、整合性として疑問が生じる可能性もあります。このため、運動制限については後遺障害として相当であることを立証して示す必要が生じます。
2)肩関節から最も離れた部分の脱臼で、何故肩関節に機能障害を残すのか?
肩関節は、上腕骨頭が肩甲関節に遠慮がちに寄り添う構造です。
肩甲骨は、鎖骨にぶら下がっている形状で、胸郭=肋骨の一部に乗っかっています。
つまり、肩鎖関節と胸鎖関節、肩甲骨の胸郭付着部は3本の脚立の脚となっているのです。
胸鎖関節の脱臼により脚立の脚が1本ぐらつき、それを理由として、胸鎖関節から最も遠い位置の肩関節に機能障害が発生するというのは、可能性としてあり得ることでしょう。
従って、ご相談当初から症状がみられる場合には、右鎖骨全体のCTを実施し、3Dで右鎖骨の走行に変化が生じているかどうか確認するようアドバイスしております。
但し、受傷の状態によっては、腱板損傷が疑われる場合もあります。交通事故には一つとして同じケースがなく、事故状況や受傷の程度によって医師の理解を得ながら原因を突き止めていく必要があります。